高齢者のための介護施設は、私たちのまちに多くみられます。都市生活や多忙な仕事生活ではやるべきことが多く、多くの人は家族の高齢者の面倒をみるスペースや時間、余裕がありません。そのため、高齢者のニーズに応える特別な施設が必要です。
東京の梅原さんのような介護福祉士の毎日の仕事には、食事、洗濯、着替えのような比較的簡単な支援作業があります。同時に、公園を散歩したり、単純な一対一の会話をしたりする努力が、多くの入所者の生活を明るくするのに役立っています。
高所得に恵まれた高齢者や、子供のいない高齢者の中には、エレガーノ神戸のような高層建築の養護施設に入居することで、洗練された生活様式を維持できる場合もあります。この高級施設は、5つ星サービス、社交イベント、屋上のバー、サロン、医療チーム、ホスピスなど、スタイリッシュに老後を生きるのに必要なすべてを備えています。
より長い寿命は人類の素晴らしい功績である一方、多くの国の保健制度にとって課題となっています。高齢化と出生率の低下により、国の労働人口が縮小し、非常に多くの定年退職者を支えることが困難になっています。
国民年金支給および保健医療費増加という観点から、日本のような超高齢社会にとって、このような状況は財政的および経済的な意味合いがあります。例えば、日本の健康に関する支出は、2000~2005年の間に実質で2.5%上昇しました。人口の高齢化と共にこの傾向は続くと思われます。
今日、世界で進む高齢化の中で、誰が高齢者の介護を担うのでしょうか?
高齢者が健康で活動的でいられるのが理想です。高齢者における障害の減少を示唆する研究もあります。しかしながら、介護の必要性は常に存在するでしょう。さらに、現在の高齢化の傾向が、公的介護の供給を上回る需要を生み出すのではないかという恐れがあります。よって日本のような社会は、介護を供給する革新的な方法を見い出し、国民の健康を確保することが求められます。
高齢者のケアには一般に3種類のタイプがあります:
インフォーマルケア:家族支援システム(家族と同居の高齢者)
日本では、配偶者、親、子供、特に母親、妻、娘、義理の娘が、伝統的に家族中心の介護の主な担い手となっていることは確かです。高齢者が家族とのつながりを維持できることに加えて、インフォーマルケアは限られた方法で家族によって提供され、国にほとんど、または全く負担をかけないという観点から理想的にみえます。
しかしながら、介護の担い手である家族が、介護の責任の大部分を維持し続けるのは困難になるでしょう。第一に、外で働く女性の数が増加していることから、大きな負担となる介護を背負うのは困難です。
第二に、インフォーマルケアは、介護者にとって、身体的、経済的、精神的に苛酷なことが多く、害を及ぼすこともあります。インフォーマルケアを、これまでのように他のタイプの支援なしに続けることが、好ましいのかどうかも疑問となります。
第三に、世界的に高齢者数が増加しており、インフォーマルケアを続けるのが困難となっています。さらに、高かった出生率が極めて低くなるにつれて、各年齢層が高齢になったときに介護を担える子供の数が減っています。多くの社会において依然として多世代家族が目立った特徴である一方、核家族化の傾向は長期にわたって続いています。
日本では、現在多世代家族のなかで同居している高齢者はわずか21%です。一方、ますます多くの高齢者が一人で暮らしています。日本の厚生労働省による2005年の調査によれば、独り暮らしの高齢者の数は、ここ30年で5倍に増加し、現在すべての高齢者世帯の22%に達しています。加えて、高齢者の生活と展望に関する2005年の国際比較研究では、日本における高齢者と成人した子供との接触の頻度は、ほかの国に比べて低いことが指摘されています。例えば、自分の子供に「ほぼ毎日」会っている高齢者は、フランスで23%、米国では41%にものぼるのに対し、日本ではわずか17%でした。

出典: International Comparative Study on Senior’s Living and Perspectives, March 2007
子供および孫との好ましい関係も変化してきています。日本では、「同居をしたい」という回答が少ないく、「時々一緒に食事をしたり会話をしたりしたい」という回答が多い傾向でした。
在宅ケアおよび地域ケア
在宅ケアおよび地域ケアには、身辺介護(例:入浴、身支度)、家事(例:食事の用意、掃除)、ライフマネジメント(例:買い物、投薬管理、交通)、補助器具(例:つえ、 歩行器)、高度技術(例:緊急警報システム、コンピューター制御の投薬記録)、家の改修(例:電灯、手すり)のような多くのサービスがあります。このサービスの組み合わせは、独立した身体的または精神的機能の喪失を、最小限にする、回復させる、または代償するように設計されています。
宅配サービスの利用は、技術的進歩に伴い、数年の間に急速に成長すると予想されます。在宅ケアは、今日の人口学的変遷の中で、最も効果的な選択肢で、高齢者の健康や地域社会への継続的な参加を確認できる最も良い方法であるとされています。
長期ケアの提供(例:老人ホーム)
長期ケアには、専門施設で長期間のセルフケアを完全にはできない人々に行われる活動が含まれます。老人ホームは伝統的に病院の延長とみられてきましたが、多くの国の老人ホームの環境は、次第に入所者寄りになり、入所者の医療的ニーズに加えて情緒的ニーズにも応えるようになってきています。
個人のニーズのレベルにより、退職者コミュニティーから高齢者養護施設まで異なるタイプの施設が利用可能です。もちろん、そのような施設は非常に高価である傾向があり、費用は家族が負担したり、場合によっては高齢者自身が支払ったり、国が支援したりします。
人口の高齢化は、多くの国にとって重大な経済的課題です
大規模な社会的供給と給付金を提供している国では、それらのプログラムの持続性を確保するために努力してきました。
日本政府によると、高齢者のための医療費は総医療費の43%以上を占めます。2006~2007年の間に、70歳未満の患者における平均医療費の支出は1.5%増加し、一方、70歳以上の医療費は2%の増加でした。
日本では、社会保障費の著しい増加に伴い、国の年金制度が変わりました。主な変更点には、給付金の減額、労働者の保険料の増額、満額の給付金を受けとれる年齢の継続的延長(男性は60歳から65歳へ、女性は58歳から65歳へ)などがあります。
政策立案者は、保健制度全体への高齢化の影響を調べる必要があります。地域社会参加と地域支援を増やし、高齢者の障害を減少させるための別の介入は、その点に関しては可能性のある解決方法です。しかし基本的には、家族や地域社会における高齢者の介護を促進する給付金の支給は、費用のかかる長期滞在施設建設の需要を減らすことに役立つ健全な投資のように思われます。
詳細はこちらを御参照ください:
http://www.kantei.go.jp/jp/choujyu/index.html
世界各国の長期ケア政策に関するレッスン
次の表では、世界の国々にみられる長期ケア政策の例を示します。日本またはあなたの国の状況と比較してどのように違いますか?
| 韓国 |
| 高所得、急速な高齢化、低い伝染病発生
韓国では、公共医療サービスへの支出レベル(1人当たり)が高く、5歳以下の死亡率が大変低く、寿命は長くみられます。高齢者の割合は中等度(7.1%)ですが、人口の高齢化は急速に進行しています。2025年までに、人口の16.9%が65歳以上になると見込まれます。そのため韓国では、慢性疾患および障害の増加に関心が持たれています。 韓国には、しっかりした医療制度と重要な社会サービス部門があり、そのいずれも長期ケアサービスの提供に関与しています。これらのサービスには、家庭医療、身辺介護、家事サービスの多くのパッケージがあります。特に家庭教育と訓練に力を入れてきました。これらの傾向は、高齢者の割合が比較的高い、家族サイズの縮小化、労働力におけるより女性の割合が高い、比較的所得が高いため資源の利用ができるといった観点から理解できるでしょう。韓国では、施設における長期ケアは大変限られていますが、長期ケアが必要な個人による救急病院の利用を減らすため、さらに多くの施設建設への関心がもたれています。 |
| コスタリカ |
| 中等度の所得水準、国による高い保健費用(1人当たり)、しっかりした保健制度
コスタリカでは、5歳以下の死亡率は低いです。高齢者の割合は低いですが、65歳以上の割合は今後25年間で2倍になると見込まれます。これらの理由により、コスタリカでは、伝染病発生の心配よりもむしろ慢性疾患と障害の増加に主に関心が寄せられています。 コスタリカのような比較的低所得の国で、国が医療に対して非常に多額の支出を行う選択をするのは、極めて珍しいことです。そのおかげで、伝染病の発生が大変低く抑えられているようです。この医療への多額の支出により、高齢期における2つの疾患(慢性疾患と障害)の発生を回避しています。 コスタリカでは、家庭教育と訓練を強調した家庭医療の提供の発展に力を入れています。それ以上の身辺介護や家事サービスを含むパッケージは導入されていません。施設における長期介護は、ほとんど存在しません。これらの傾向は、高齢者の割合が低いことや、女性労働力の割合が低いという点から、理解することができます。 |
| 南アフリカ |
| 比較的高い所得水準、高い伝染病(特にHIVエイズ危機に関連)による負担、短い寿命、地域社会における長期ケアを何らかの形態で取り入れようとする試み
南アフリカは、HIV/AIDSの汎発流行により大きなダメージを受けた国です。国は非常に高いレベルの経済的資源をもち、1人当たりのGDPのうち、比較的高い割合を医療に支出しているにもかかわらず、HIV/AIDSなどの伝染病の影響により、南アフリカの平均寿命は本研究対象の国の中で最低レベルでした。 主にHIV/AIDSによる一般国民の無力化や、伝統的な家族単位の崩壊に呼応して、南アフリカ政府は、病気にかかった個人に対する何らかの地域ケアの形態を開発し始めました。提案に基づき、地域ケアプログラムでは、家族内のすべての年齢層のニーズに対して包括的なアプローチを行い、地域社会からボランティアが多数参加する方式を確立しました。一次医療に統合された、または独立したその他のモデルは実験段階です。 |
| インドネシア |
| 低所得、高い伝染病による負担、低い高齢者率
インドネシアは、高齢者の割合が低く、経済的資源の少ない国の典型です。5歳以下の死亡率が高いため、伝染病対策に高い関心があります。同時に、急速に高齢化がみられ、今後25年間に65歳以上の高齢者の割合はおおよそ2倍になる見込みです。このように、慢性疾患と障害による負担の急速な増加にも直面しています。 インドネシアの状況は、低い保健基盤と多い伝染病の発生に直面している中で、長期ケアサービスの開発の支援をどこから始めればよいのかという根本的な問題を提起しています。インドネシアで利用できる範囲の長期ケアサービスは、主にボランティアによって支えられています。このことは、どのようにボランティアの役割を強化するのかという問題と同時に、ボランティア活動から期待できることには限界があるという懸念もあります。 |
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