世界保健機関のジェイコブ・クマレサン博士は増加する都市部に住む高齢者について日本の経験からどのようなに対応すべきかを説明します。
クマレサン博士は、我々は高齢者の役割に対する考え方を変える必要があり、高齢者は社会の宝と認識すべきであると訴たえます。

慶応義塾大学の坪田医師によれば、健康管理には3つの重要な要素があります。それは、運動や適切な栄養摂取など老化疾患の発症を遅らせる初期段階におけるアンチエイジングのセルフケア、医療を必要としている個人を経済的にサポートする医療制度、そして正常に機能しない体組織を修復または交換できる新しい再生医療の分野です。

健康寿命は、個人と政策立案者が連携して努力することで大幅に延長します

個人と行政機関が協調して努力することによって、健康寿命は、平均寿命が29歳と低いアフリカの一部地域では16年、ヨーロッパ諸国、米国、オーストラリア、ニュージーランド、日本のような高所得国では最高で約5年延伸する可能性があります。健康で自立した高齢者は家族や地域社会に積極的に貢献し、そのような高齢者の参加は、地域社会の重要な人的資源になります。そして、このような社会的貢献は、高齢者が健康を存分に実感し、社会が高齢者のニーズに対処できたときに初めて実現するのです。

ただし、病気ではないということだけでは、必ずしも加齢と共に必要となる良好な生活の質は得られません。運動能力、自活力、認知機能、心理的状態、社会的関係も非常に重要です。そして、それらは年を重ねても(一部においては良い栄養状態を通して)良好に維持されなければなりません。個人、ヘルスワーカー、地域社会、行政機関の活動が、下図に示されているようなあらゆる決定因子に関与し、健全な高齢化につながります。


出典:Davies AM (1998). Ageing and health: A global challenge for the 21st Century. Proceedings of a WHO symposium, Kobe, 10-13 November 1998.

健康長寿:誰の責任か?

実際には、高齢期における健康とより良い生活の質を実現するには、様々な社会レベルにおいて多くの人々の努力が必要です。ここでは健康長寿社会が必要とする幾つかのステップを取り上げます。

1. 行政機関と社会一般:高齢者が健康を維持するためには、生活する周りの環境からの支援が必要です。個人で解決できることもたくさんありますが、個人では対応できない事項もあります。有毒化学物質で汚染された空気、殺虫剤で汚染された食物のなかでは、高齢者は健康を維持するのは難しくなります。食材が健康を害するものであったり、食品表示の欠落によって健康に害のある成分が食物に含まれているかどうかを知ることができないような場合、個人の健康維持は期待できません。騒音や、危険な職場では、人々の生活様式の変化に関係なく、聴力や筋肉・関節が障害を受けます。仕事場でタバコの煙が充満している場合や、若年者が喫煙するような生活地域が安全でない場合、高齢になってからの健康は見込めません。国によっては、健康長寿のために配分される財源を、政府が医療制度を通して管理しています。

2. 地域社会:地域社会と地方自治体には、住民の自立を援助する大きな責任があります。高齢者が健康を維持するためには住居も必要です。また、その生活地域で安全な食物が得られることや、安全に地域内を移動できることも必要です。そして、その生活地域で他の人とふれあう機会が得られることも不可欠です。孤立することによりさらに健康状態が悪化することが明らかです。地方自治体が保健行政を担当している所では、高齢者の健康管理を援助するための病院、療養所、ヘルスワーカー、医薬品が必要です。高齢者の健康にある種の優先権を与えることによって、高齢者の援助に使える予算を確保できます。

3. ヘルスワーカー:個人が身の周りのことを自分自身で全てできる場合でも、やはり医療専門家による援助を受ける必要があります。ヘルスワーカーは対応可能な状態でなければなりません。また、医療専門家は疾病予防に関する有益なアドバイスを与え、病気の初期段階で診断をし、治癒または病状の進行を遅らせるための支援や治療を行います。

4. 高齢者自身:高齢期の健康には、個人が自分自身の健康に積極的に気を配る必要があります。より健康的な高齢期を迎えるために、個人が変えられることや、行えるステップがあります。

例えば、食習慣があります。年齢を重ねるにつれ、栄養に関しては特別な配慮が必要です。エネルギー消費量は、年齢と共に低下します。従って、エネルギーのバランスを取るために、エネルギー摂取量をより少なくする必要があります。このように摂取エネルギー量を減らす場合、栄養のバランスがとれた食べ物を摂取しないと、高齢者の栄養状態に悪影響を及ぼします。栄養分や生物活性成分(例:植物化学物質)が豊富な食品を消費することにより、免疫能障害や認知障害のような重要な高齢に伴う障害の予防に役立つ可能性もあります。
高齢者にとって健康とは、自立性を保ち家族や地域社会に貢献し続けるのに、欠かせることのできないものです。

日本のヘルスプロモーション:寿命の延長から生活様式の改善まで

日本は、1970年代後半から健康予防の重要性を認識し始め、ヘルスプロモーションの分野で多くの指導力を発揮してきました。特に、国と地方の保健機関は、健康な生活様式と成功加齢の促進、母子の健康改善、他の健康のための様々な重要問題を目的とした幾つかのプログラムを開始してきました。

計画の第1段階が1978~1988年に開始され、ヘルスプロモーション活動の活動拠点として地方自治体による保健センターが設立されました。
1988年に開始された「アクティブ80ヘルスプラン」は、計画の第2段階に位置づけられ、国民の寿命を80歳に延伸することが目標とされました。この計画では、より多くの国民が健康診断を受け、地方自治体の保険センターを改善することが目的とされました。

第3段階は「健康日本21」と呼ばれ、日本国民に健康的な生活習慣を奨励する国家計画で、2000~2010年の期間を目途に導入されました。日本政府によると、「健康日本21」は認知症や寝たきりにならずに生活できるように、早世の低減および健康寿命の延伸により包括的に国民の健康を促進します。この計画では、すべての国民が健康で、幸せな長い人生を送ることができる社会の達成を目的としています。

「健康日本21」では、県、市、町、村をこの計画および実行の過程に組み込むことによって、日本の国民健康増進計画における多くの優先事項を地方に移転しました。それにより、地方自治体が優先するべき国民健康をサポートする健康改善活動発展の役割を果たすようになり始めました。

これに続いて、健康増進法が2003年5月に施行されました。この法律では、これから数年間の基本的な国民健康の方針、および県と市区町村におけるヘルスプロモーションのためのシステムについて、より詳細に述べられています。また、健康診断やヘルスプロモーション、受動喫煙の予防法に関する指針を提供しています。さらに、健康と栄養に関する全国調査、および個別の食材料の栄養に関する情報の提示を求めています。


兵庫県と神戸市におけるヘルスプロモーション

WHO(世界保健機関)神戸センターのホスト(ドナー)行政機関である兵庫県と神戸市は地域保健計画を作成しています。

1999年に「日常生活における行動指標」が取り決められ、これが兵庫県の「健康ひょうご21」と呼ばれる健康管理政策の指針となりました。この「健康日本21」の地方版のゴールを達成するために、県庁の中にヘルスプロモーションセンターが設立されました。これらの取り組みにより、兵庫県健康財団と共に、兵庫県民の健康のために7つの分野における行動(セルフチェック、運動、食習慣、心の健康、タバコ、アルコール、歯の健康)を提示します。さらに、3つの生活習慣病に特別な注意を要することが確認されました。

同様に「健康こうべ21」は、神戸市保健医療計画2010の1部で、市の基本的な保健医療プログラムの1つです。神戸アスリートタウン構想基本計画は、市民の健康とスポーツ活動を促進する目的で作られ、「健康こうべ21」計画と密接に連携しています。高齢者に関しては、「健康こうべ21」で幅広い提案がなされています。幾つかの重要な例として:

- 市内の高齢者の健康な生活様式に関する研究
- 万歩計を用いた運動やウォーキングと植樹を関連させたポイントプログラムの促進
- 地域ウォーキングプロモーション:1日1万歩の促進、コミュニティにおけるウォーキング地図、ウォーキング教室
- 神戸の地域スポーツクラブ(神戸アスリートタウン)との協力
- 歯周病予防の意識向上のイベント
- 80歳以上の高齢者が20本以上の歯を維持できるようにする保健活動を奨励する「8020運動」の促進
- 高齢者の世話をする医療ヘルスボランティアの専門家情報蓄積

リンク:

高齢者の自立の維持におけるライフコースの見通しに関するWHO報告

坪田博士

日本抗加齢医学会

高齢化に関する国連プログラム

健康長寿

WHO-高齢化と栄養に関するウェブページ

WHO-生涯健康を保つ:高齢者に必要な栄養について